道具としての笑い     江口 歩 Eguchi Ayumu 


 
vol. 3
  当たり前のこと
2001-10-29
 

 

このコラムについてちょっとだけ悩んでいます。

昨日(10/28)、新潟県十日町市内の在宅高齢者の介護者を対象に、
「お笑いでいきいきリフレッシュ」ということで芸人と一緒に行ってきました。
参加社は100人以上いたのに男性はひとりだけ。平均年齢は60代から70代。
自分の旦那か旦那の親を介護しているというのがほとんど。

介護士、看護士、ホームヘルパー以外で、これだけ多くの在宅介護をしている人たちの前でやるのは初めて。
これまで様々なかたちで高齢者の前に立ったことがありますが、こんなに盛り上がったことはありません。オレらは高齢者のアイドルなのかと勘違いするくらいでした。
しかしその笑いには裏がありました。
主催者の話によると、在宅高齢者の介護者は「毎日が本当に大変」なのだそうです。
そりゃそーだろって話ですが、介護者の笑いが大きければ大きいほど、「毎日が本当に大変」というこの当たり前のフレーズが、ほんとーに大変なんだなって気がしたのです。

いまごろ何だよって話だし、それに本当に大変なんだという「気がした」だけで実感のないオレが介護や看護についてあーだこーだ言うのもなんだなぁ〜と、ちょっと悩んでいるわけです。
でも、昨日のように大きな笑いの裏側に、日々の苦労やストレスが隠れているのがこんなにも見えたのは初めてでした。

昨日ぼくらは最後の方で、介護者のみなさんの御苦労やお悩みはぼくらの想像以上に本当に大変なんだと思います、とここまで言ったらさっきまであんなに笑顔だった顔が急に真顔になり、深くうなずく人もいれば、涙目になっていた人もいて、うわぁ〜、これはうわべなことは言えないし、エールを送る立場でもないやと思い、咄嗟に出た言葉が「とにかく笑っていきましょう」でした。
これもぼくらにとっては当たり前の締め言葉なんですが、本当に笑っていこう!って思って話したのは初めてなんじゃないかな。
じゃあ、いつもいい加減な気持ちで言っているのかって思われるかもしれませんが、ええ、いつもは流れで言っていることが多いです。

介護や看護については正直いって知識はありません。介護者の苦労も悩みも本当のところはわかりません。でも、笑っていったほうがいい!ってことだけは再確認しました。

 で、昨日の75分間、一体何をやったのかは次回。
 今回は大変遅くなったので一週間以内に更新します。

 

vol. 2
  大好評コラム
2001-9-18
 











新潟のお笑い集団NAMARAの芸人は、余興の他に介護者を介護したり、介護士の先生をしたりしています。
そんなバカなといいたい気持ちは分かりますが現実です。
下記は前回のコラム以降に来た仕事でこれから行うものです。

新潟県糸魚川総合病院「病院祭」
入院患者と地域住民にも参加してもらい楽しく過ごすイベントです。
特別養護老人ホーム三好園「生き生きリフレッシュで身も心も健康に」
介護者に参加してもらい日頃のストレスを解消してもらうものです。
介護労働安定センター「介護におけるコミュニケーション技法」
介護士への講演です。

中卒、高卒の売れない芸人がどーしてと思われるでしょう。
しかしそれは「笑い」の持つ効能が見直されてきているからです。
しかもその効能を生かした「お笑いワークショップ」が大流行りしているのです。
と、ここまで前回のコラムで紹介しました。
で、ところでその「お笑いワークショップ」とは何なんだと説明するまえに、看護や介護の世界の他に我々が何をしているのかを少し紹介します。

   --- 学校と笑い ---
看護、介護の世界よりも学校の世界での活動が活発です。
例えば、小学校、中学校の新採用の先生たちの研修会。先程も書いたように、中卒、高卒の二十歳そこそこ芸人が先生の先生をします。しかも好評です。
ちなみにどんなことをしているかというと、オープニングのさわりだけ紹介します。
先生たちをいきなり女子トイレに押し込みます。ぎゅうぎゅう詰めです。一体何が始まるんだと不安な表情の先生たち。そして我々の第一声。

「これよりホームルームを行います。今のこの状況は非常識でしょうか?」
このあとの展開は想像して下さい。

さてさて考えてみれば先生と芸人には共通点があります。
教壇は舞台。
生徒はお客。
先生は芸人なのだと思います。
教室の空間を演出するのも仕事でしょう。
先生と芸人との違いは、芸人は売れないと死んでしまうが、先生は売れなくても生き残れるんだなこれが。

あと最近では職業体験学習がありました。なんとNAMARA事務所に中学生が二日間にわたり職業体験をしていくのです。世の中も変わってきています。
そして学校からの要望で一番多いのは「お笑い授業」。特に中学が多いのですが、先生、生徒、親と一緒になってコントを作ったりします。
先生、生徒、親の立場を替えて行った三者面談コントは話題を呼びました。
さらに注目すべき点は「先生 vs 生徒によるトークバトル」司会進行を芸人が行なうことによって殺伐とした状態にはならずに本音を語り合う展開になりました。
なんと今では新潟県外からもトークバトルディスカッションの依頼が来ています。
笑いを使わないと言いたいことが言えないようです。困ったものです。

とまあ、このように学校に笑いが様々な形で使われてきています。それも「笑い」の持つ効能が見直されてきているからでしょう。
で、その見直された笑いの効能を生かした「お笑いワークショップ」ですが、気が付くとスペースがなくなってきましたので次回。

 次回は10月はじめ。

 

vol. 1
  とりあえず、はじめまして
2001-8-16
 
 

   --- お笑いワークショップ ---
日本全国に蔓延る不景気にまったく関係なく不景気続きのNAMARA。
とりあえずスタッフ3名、芸人2名が月十万前後で生活しています。
テレビ、ラジオのレギュラーはあるもののお金にはなりません。
ライブをやってもやるだけ赤字になります。
じゃあどうやって稼ぐかというと、イベントやお祭りなどの余興。
その他に笑いの効能を生かしたワークショップです。

   --- 看護と笑い ---
 「看護職員リフレッシュ研修会」
 「お笑いで癒そう日頃のストレス」
 「笑いと健康」
 「新潟県介護福祉士研修会」
最近、このようなタイトルのついたものによくNAMARAが呼ばれます。
理由が二つあります。
笑うことはストレス発散ができ、ガンの抑制にもなるそうです。
つまり、ひとつは「笑いたい」から呼ばれます。
もうひとつは「笑いを取り入れたい」から呼ばれるようです。  

   --- 会話の潤滑油としての笑い ---
看護の世界に限らず、あらゆる世界で会話が下手になっています。
価値観の多様性も手伝って本音で話せなくなってきているようです。
本音は相手を傷つけることもあります。
傷つけることによって摩擦が生じます。
摩擦を恐れ本音を隠しているうちに、本音が何なのか分からなくなるものもいます。
自分の本心がどこにあるのか分からなくなる状態です。
そうなる前に本音で話すことを勧めます。
で、問題の摩擦ですが、「笑いを取り入れる」ことによって少なくなります。
本音を笑いのオブラートに包んでやると、相手を傷つけることなく会話ができます。
つまり、笑いはコミュニケーションを円滑にさせるための道具でもあるわけです。

NAMARAはまだまだ未熟な集団です。
研修会といっても大層なことは言えません。
お笑いワークショップで笑いをちょっとだけでも取り入れてもらえればいいのです。
取り入れた道具を自然に使えれば最高なのですが、そう簡単にはいかないでしょう。
そんな簡単ならNAMARAは全国区になっています。
道具を手に入れるためのワークショップってところでどんな内容なの?
それは次回。

 


 

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